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タイでクーデターが多い理由

タイという国が日本から地理的、心理的に近く、成長力が大きいことに異論が無いにしても、なぜ継続的に株価が割安な状態なのかについては疑問に思う人も少なくないでしょう。

一般に、新興国の株価は外国人投資家の動向に大きく左右されます。新興国は経済規模が小さく、自国の投資家よりも外国人投資家の方が多額の資金を投入できるからです。

しかし、先に、イラン株がなぜ非常に割安かを説明した際、イランの政治的リスクについて触れましたが、外国人投資家は予想しにくい政治的リスクを嫌うものです。

例えば、その国の政府が外国人投資家の信用を失墜させるような政策を採り続けたり、政変が起きたり、これからそのようなことが起こる危険性が高いと思われている場合です。

前者は、外国人が株式投資で得た利益を国外に持ち出しにくくするような政策を突如発表するような例があり、後者の事態が発生すれば、その国の証券取引所が閉鎖されたり、株取引が中止に追い込まれたりする可能性があります。

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先にあげたアジアの低PER市場をもたらしているリスクには、次のような原因があると考えられます。

タイは1997年のアジア通貨危機の震源地。

韓国は北朝鮮と隣接していることから地政学的リスクが懸念されている。

インドネシアは政情が不安定であることと、公務員の腐敗が問題。

フィリピンは貧富の格差の拡大、劣悪な治安などが問題。

このように書くと、それも恐ろしい国に思えてきます。

外国人投資家が逃げ出すのも無理からぬようにも思えます。

ただし、外国人は現地に住む人に比べ、大きな問題が起きると過剰反応しやすいという事情もあります。

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このように考えると、イラン、タイ、インドネシア、韓国、フィリピンの政治的リスクについても十分に念頭におく必要はあるものの、外国人投資家が過剰な反応をしてこれらの市場を忌避し、結果的に低PERを引き起こしている可能性も見なければならないでしょう。

では、タイの政治的リスクについて、もう少し詳細に見ておきましょう。

2006年9月、タイでクーデターが起きました。

日本の戦後世代にはなじみが薄い言葉ですが、これは軍部が政府を武力で倒して、政権を転覆させることをいいます。

例えて言うなら、自衛隊が決起して、永田町の首相官邸は国会議事堂を制圧し、日本国憲法を停止すると宣言するような事態です。

マンガのあらすじのようにも思えますが、外国ではときおりクーデターが起きています。

タイはクーデターが多い国で、第二次大戦後だけでも、成功したクーデターが今回を含めて9回、失敗したものが7回も発生しています。

今回のクーデターは株式投資と少なからず関係があるので、その構図を簡単に説明しておきましょう。

ことの発端は2006年1月にさかのぼります。

タクシン・シナワット首相(当時)の一族は、所有していた「シン・コーポレーション」という通信会社の株式の全てを730億バーツ(約2628億円)でシンガポール企業に売却しました。

この事実が明るみに出たところ、タイ世論が激しく反発したのです。

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問題とされた点は、

1:シン・コーポレーションの売却先が外国企業だったこと

2:売却益に対して一切税金を支払わずに済んだこと

3:取引に関連して首相の長男がインサイダー取引容疑で罰金を科せられたこと

の3点です。

そもそも、シン社はタクシン首相が首相就任前に創業した会社で、売却時までにタイ最大の携帯電話事業者「アドバンストインフォサービス」を参加におさめるなど巨大企業に成長していました。

AISはタイ証券取引所で最大の時価総額を誇っていました。

その売却先は、シンガポール政府が所有する「テマセク・ホールディングス」という投資会社。

つまり、公共性の高い事業を営むタイ有数の大企業がシンガポール政府に売却されたわけで、これがタイ人のナショナリスティックな感情に火をつけたと報じられました。

タイ人は、東南アジアで最も裕福なシンガポールに対してライバル意識があるためともいわれています。

「2」はタイの法令上、キャピタルゲイン課税が存在しないので不法行為ではありませんが、約2600億円という途方もないお金を手にしたのが首相の一族ということで、政治腐敗を連想させ、反発を招いたのです。

こうした批判が高まったため、タクシン首相は総選挙に打って出ましたが、野党がボイコットし、憲法裁判所もこれを認め、選挙は無効となるなど混迷が深まりました。

結局、9月19日、首相外遊中に軍部がクーデターを起こし、こういった理由からタクシン首相は権力の座から追放されたわけです。

日本のように戦後一度もクーデターを経験していない国では、憲法が停止されるような異常事態でどのようなことが起きるのか想像もできませんが、タイでは過去に何度も同じような過程を経ており、それなりにスムーズに進行しているようです。

 

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